自動車ディーラーや中古車販売店で、車の買取りや下取りの時に、価格がいくらになるかを決めるために『査定』をおこないます。
車の『査定』は、車種や年式、走行距離といった情報の他に、実際の車がどのような状態になっているか確認をします。そのなかで最も重要視されているのが『修復歴(事故車)』です。
『修復歴』が有る車は『修復歴車』や『事故車』と呼ばれ、市場価値が1割~3割ほど下落します。自動車販売店等の査定士も、この『修復歴』の有無を、最も意識しながら査定をおこなっているくらい、重要なチェックポイントとなっています。
その非常に重要な『修復歴』ですが、今回は『修復歴車』の中でもフロントの次に修復歴が多い、リヤ部の確認方法やコツについて解説します。
「これから査定をする人」や「査定のことを知りたい人」、「中古車を購入して心配な人」や「車の購入予定がある人」などにも、知っておけば役に立つ修復歴発見方法をわかりやすく解説。
私は、15年以上車の査定を行っており、査定教育などをおこなった経験もあります。そんな私も重要だと感じることですので、是非最後までご覧ください。
修復歴を見つけるのは、簡単ではありません。コツが必要です。
修復歴を見つけるために効率がグッと上がる、外装の確認方法も参考にしてください。
▼外装の確認方法についてはこちら▼
『プロが解説!車の査定ポイント。修復歴を見つけるコツは外装の確認から』
▼その他の修復歴の確認方法についてはこちら▼
『プロが解説!車の査定ポイント。修復歴を見つけるコツは外装の確認から』
『プロが解説!車の査定ポイント。修復歴を見つけるコツ-フロント編-』
『プロが解説!車の査定ポイント。修復歴を見つけるコツ-サイド編-』
『プロが解説!車の査定ポイント。修復歴を見つけるコツ-ルーフ編-』
▼修復歴車についての記事はこちらを参考に▼
『修復歴車(事故車)を買ってはいけない理由!中古車選びに重要な知識』
修復歴とは骨格部位の損傷
修復歴とは、事故車と呼ばれることもあり、基本的に車の骨格部位に損傷や修理跡、交換跡などがある状態のことをいいます。
交通事故などで損傷した場合に限らず、何らかの理由により、外部、外装パネルを介して骨格部位が損傷をしたり、その修理跡がある場合に修復歴となります。ですから交通事故をに遭った場合でも、損傷が軽微で、骨格部位に影響がなければ、修復歴車に該当しません。
※事故に遭ったからと言って、必ずしも修復歴車(事故車)になるわけではありません
▼骨格部位(フレーム)についてはこちらを参考に▼
『車の骨格部位(フレーム)の名称。初心者にもわかりやすく解説!』
リヤ部の修復歴の基準
JAAI(日本自動車査定協会)によるリヤ部の修復歴の定義は、このようになっております。
下記の骨格部位に損傷、修理跡がある場合は、修復歴となります。ただし、骨格は溶接接合されている部位のみで、ネジ(ボルト)止めの部位は骨格には該当しません。
小さな損傷の大きさはカードサイズ(8.5cm×5.4cm)未満です。
主な骨格部位 | 修復歴とする | 修復歴としない |
リヤクロスメンバー | ・交換されている ・曲がり、凹み、修理跡がある | ・小さな凹み、修理跡 ・突き上げによる損傷、修理跡 |
リヤサイドメンバー | ・交換されている ・曲がり、凹み、修理跡がある | ・コアサポートより前、エンドパネル より後の損傷、修理跡 ・牽引フック部の損傷、修理跡 ・バンパーステー取付け部の小さな 凹み、修理跡 ・突き上げによる損傷、修理跡 |
リヤインサイドパネル (インナーパネル) | ・交換されている ・外部、外板を介して波及した 凹み、曲がり、修理跡がある | ・コアサポートより前の損傷、修理跡 ・小さな凹み、修理跡 |
リヤフロア (トランクフロア) | ・交換されている ・パネル接合部に、はがれ、修理跡 がある ・破れ、亀裂がある ・外部、外板を介して凹み、曲がり、 修理跡がある | ・エンドパネル、リヤフェンダ等の 交換時に生じた損傷 ・小さな損傷、修理跡 ・スペアタイヤ格納部等の突き上げ による損傷、修理跡 |
こちらに記載されているような状態であれば、修復歴車になります。
リヤ部の骨格部位
車のリヤ部は、修復歴車の中でも、フロントの次に修復歴の多い箇所になりますので注意して確認をしましょう。
リヤ部の損傷で多いのは、主に追突による交通事故です。
自動車の交通事故による統計で最も多いのは、追突による事故です。ですからリヤ部の修復歴車が多いのもうなずけます。
フロントにある主な骨格部位は、4箇所あります。
- リヤフロア(トランクフロア)
- リヤインサイドパネル
- リヤサイドメンバー
- リヤクロスメンバー
基本的には、この骨格部位に損傷や修理跡があれが修復歴車に該当します。
まずはリヤ部の外装パネルや部品の確認
リヤ部に修復歴になるような損傷などが過去にあるかを確かめる為に、まずは外装パネルを確認していきます。外装パネルに修理跡などがある場合、過去に大きな損傷があることがわかりますので、修復歴を見つける手掛かりになります。
リヤ部の外装パネルや部品の確認は、「バックドア(トランクフード)」と「リヤフェンダー」、「エンドパネル」、「パネル同士の隙間の状態」の確認が重要になってきます。
- バックドア(トランクフード)
- リヤフェンダー
- エンドパネル
- パネル同士の隙間の状態
▼外装パネルの名称についてはこちらを参考に▼
『車の外装部位名称一覧。初心者にもわかりやすい自動車部品の名前』
外装の修理跡の確認は修復歴発見の重要な手がかり
外装のパネル交換跡や板金修理跡を見つけることで、「その個所が過去に損傷した」ということがわかります。過去に損傷があったと思われる個所の内側にある骨格部位を、詳しく調べることで修復歴を発見することができますので、外装の状態を調べることが重要になってきます。
バックドア(トランクフード)の確認方法
バックドアは、リヤ部の荷室のドアのことで、ステーションワゴンのようなワゴンタイプの車両では、バックドアと呼ばれ、セダンタイプの車両では、トランクフードと呼ばれます。
バックドア(トランクフード)は、リヤ部の修復歴を見つける上でとても重要な箇所になります。
主に、「取付けネジ」「シーラー」「塗装跡」の確認をおこないます。
バックドアの「取付けネジ」の確認
バックドア(トランクフード)の取付けネジを確認することで、パネル交換されているかを判断します。上に開く、跳ね上げタイプのドアの場合、車両上部のルーフに近い位置に取付けネジやヒンジがあり、横に開くタイプのドアの場合は、左右どちらかに取付けネジやヒンジがあります。
「取付けネジ」に 工具を使用した跡の傷がついている、不自然に塗装が塗られている場合などは、ボンネットを交換した可能性があります。
バックドアの「シーラー」の確認
バックドアのシーラーは、裏側の周囲に塗られています。その状態を確認することでもパネル交換されているかの判断ができます。
基本的にドアパネルを交換修理した場合、新しいパネルのシーラーは、板金修理工場で塗られますので、新車製造時とは違った状態になります。ですから、その違いを見つけ、交換されているかを判断します。「シーラー」は、主に「形」や「色」、「硬さ」の状態を確認しましょう。
交換されているバックドアのシーラーの特徴
- 「形」…均一性が無く、細かったり太かったりと不揃いなことがある。
- 「色」…交換されたパネルは、塗装を塗って仕上げ、車両に取付けるので、その塗装がシーラーにも塗られ、新車製造時の状態よりも「艶」がでることがある。
- 「硬さ」…新車製造時のシーラーよりも、柔らかいものが多く、指や爪などで押すと、弾力があり、「プチッ」とした感触がある。
上記写真は、一例ではありますが、交換されているバックドアのシーラーの状態です。新車時の状態とは違い、細くて形が不揃いなシーラーが塗られています。
バックドアは、リヤ部に1パネルしかないので、ドアのように左右で見比べることができません。ですから状態の違いを見分けるのに注意が必要です。ただ、同じ車のパネルであれば、似たシーラーが塗られていることが多いので、他のパネルのシーラーの状態も参考になります。
※車両によっては、バックドアが樹脂製パネルの場合もあります。その場合は、シーラーが塗られてないので、「取付けネジ」の状態などのシーラー以外の箇所を確認して、バックドアが交換されているか見極める必要があります。
バックドアの「塗装跡」の確認
パネル表面の状態を確認し、「板金修理」や「パネル交換」がされていないかを確認します。
板金修理の主な工程は、
- 凹んでいる箇所にパテを盛る
- サンドペーパーで磨くことで形を整える
- ボディーカラー等を塗り、仕上げる
その修理過程の中で、新車時とは違った状態に仕上る部分がありますので、その状態を見つけ、「板金修理」や「パネル交換」がされているかを判断していきます。
板金修理、パネル交換時の塗装の特徴
板金修理、パネル交換修理 共通の特徴 | 板金修理の特徴 |
・パネル表面が波状に見える ・塗装に異物や気泡が混入している ・塗装の垂れがある 塗装不良による色の違いやムラがある | ・パテをサンドペーパーで磨いた跡がある ・パテ不良による小さな窪みある ・パネルを叩いて修理した跡がある ・淵にマスキングテープ跡がある |
「板金修理」や「パネル交換」などの修理がされた場合、上記のような状態が形跡として残ることがあります。このような状態が無いか、パネル表面を確認します。
リヤフェンダーの確認方法
リヤフェンダーは、リヤドアの後ろにあるパネルで、ほとんどの車は「溶接」で取付けられています。
取付け部である「溶接部」、その周辺の「シーラー」、パネル表面の「塗装跡」をしっかり確認し、修理跡が無いかを判断します。
リヤフェンダーの「接合部(溶接部)」の確認
リヤフェンダーの接合部(溶接部)を確認することで、パネル交換がされているか判断できます。
確認する接合部(溶接部)の箇所は、
- リヤドアを開け、リヤフェンダー側にあるウェザーストリップ内側のスポット溶接部
- バックドアを開けたところにある、リヤフェンダーとの接合部である溶接部
この2つの接合部を確認する必要があります。
リヤドア側の接合部は、ウェザーストリップを外すと、接合部であるスポット溶接の状態が確認できます。スポット溶接は、新車製造時の状態では、くっきりと丸い形がわかる形状をしていますが、パネル交換により、板金工場で溶接しなおされたものは、「形がわかりにくい」ものや、「小さな穴が開いている」もの、裏側をみると「ペーパーの跡や溶接のコゲ跡」が残っていることもあります。
※ウェザーストリップは、丁寧に扱わないと破れる恐れがあります。外すときには、注意してください。
バックドア側の接合部は、バックドアを開けた両サイドにあります。車両によって場所や接合状態が違うこともありますので、注意してください。
接合部はスポット溶接やレーザー溶接などの溶接で取付けらています。
スポット溶接は「丸い形」、レーザー溶接は「線状の形」をしています。
パネル交換されている場合、溶接跡は、新車時とは違った状態になっていますので、左右で見比べるなどの工夫をしながら、注意して確認しましょう。
リヤフェンダーのバックドア側の接合部には、シーラーも塗られていることが多いです。そのシーラーの状態を確認することでも交換されているかの確認ができいます。左右で見比べやすい場所でもありますので、必ず確認しましょう。
シーラーは、他のパネル同様に「形」や「色」、「硬さ」の状態を確認します。
リヤフェンダーの交換跡で、もう1つ重要なのが、パネルのどこかで切断し、交換してあることです。リヤフェンダーはルーフやボディサイドシルと一体になっているパネルであることが多いため、「リヤドア側のスポット溶接部」と「バックドア側の溶接部」、それから「パネルの比較的切断しやすい部分での切断」により交換されます。
上記写真は、左リヤフェンダーの交換修理過程の写真です。損傷したリヤフェンダーをーの箇所で切断し、新しいパネルを溶接で接合し、パテを塗り、ペーパーで整えた後の状態です。
切断する場所の特徴は、車両や損傷具合にもよりますが、比較的切断する長さが短いところで切断されます。その方が修理しやすく、仕上がりもきれいになりやすいからです。
パネル切断箇所は、板金修理されたときのように仕上がるので、パテの跡やペーパーの跡が残ります。
リヤフェンダーの「塗装跡」の確認
パネル表面の状態を確認することで、「板金修理」や「塗装修理」などの修理跡をみつけることができます。
確認方法は、『バックドアの「塗装跡」の確認』と同様にパネルの状態を確認し「板金修理」などがされていないかを確認します。
▼動画でも紹介しています▼
エンドパネルの確認方法
エンドパネル(リヤエンドパネル)とは
エンドパネルは、リヤバンパーの内側にあり、リヤフロア(トランクフロア)後端に取付けれている金属製のパネルで、外装パネルとして扱われることもあります。
※エンドパネルは、リヤフロア(骨格部位)に直接溶接されていることが多いです。ですから、エンドパネルに「板金修理跡」や「パネル交換跡」あった場合は、隣接するリヤフロア(骨格部位)にも損傷が波及してる可能性が高いです。リヤフロア(骨格部位)の確認も必ずおこなってください。
骨格部位であるリヤフロア(トランクフロア)に溶接で取付けられているので、エンドパネルが交換されていたり、板金修理されている場合は、リヤフロアの修復歴が疑われる部位でもあります。リヤフェンダーやバックドア同様に修復歴を発見する上で、しっかり確認する必要があります。
- エンドパネルの交換跡は、接合部の「スポット溶接跡」とリヤフロアとの接合部にある「シーラー」の状態を確認することで、見つけることができます。
- エンドパネルの板金修理跡は、「パネル表面の状態」や「接合部の状態」を確認することで見つけることができます。
エンドパネル接合部「上部」の確認
スポット溶接跡は、上記写真の位置にあるウェザーストリップを外すことで確認することができます。メーカーや車種によっては、「スポット溶接」以外にも、線状の形をした「レーザー溶接」などで接合されている場合もあります。
エンドパネルの溶接部の確認は、「リヤフェンダーの「接合部(溶接部)の確認」と同様に、スポット溶接部が新車時とは違った状態になってないかを確認し、交換されているかの判断をします。
エンドパネルが交換されている場合は、溶接跡の「形が不自然」であったり、溶接跡を平らにするための「ペーパー跡」、「小さな穴」がある、溶接時の「焦げ跡」などが残っていることもあります。
下の写真は、エンドパネルが交換されている状態の1例です。
- スポット溶接の「形が不自然」
- 「小さな穴」がある
- 溶接跡を整えた時の「ペーパー跡」
などの状態がエンドパネル接合部で確認できます。
エンドパネル接合部「室内側」の確認
エンドパネルの溶接部の確認は、リヤフロアとの接合部も一緒に確認します。
リヤフロアとの接合部は室内側から確認することができます。セダンタイプの車両であればトランクの中から確認をおこないます。
上記写真は、室内側から見たリヤフロアです。荷室のカバーやスペアタイヤもしくは、パンク修理キットなどがある発砲スチロール等を取外すとリヤフロアが見えてきます。
黄色い↓を覗き込むとエンドパネルとリヤフロアの接合部が確認できます。
エンドパネルとリヤフロアの接合部を室内から確認すると、溶接の状態を見ることはできませんが、上記写真のように「シーラー」の状態を見ることができます。
新車製造時からの「シーラー」の状態は、メーカーや車種によって異なりますが、多くの場合、写真のように白色(クリーム色)のような色をしています。「硬さ」も比較的硬めです。
エンドパネルが交換されている場合、「シーラー」の色は、ボディーカラーやパネルと同じ色になっていることが多いです。「硬さ」は比較的柔らかく、指で押すと弾力がわかります。
これは、修理工程でエンドパネルなどの部品を取付けた後にシーラーを塗り、そのあとに塗装をするため、シーラーにもボディーカラーやパネルと同じ塗装が塗られるからです。
上記写真は、エンドパネルを交換している車両です。エンドパネル交換後に塗装をおこなっているため、「シーラー」が白色(クリーム色)でなく、パネルと同じ色になっています。
エンドパネル接合部「下回り」の確認
エンドパネル接合部は、外側にある下回りからも確認しましょう。
車両の下から覗き込むことでも、エンドパネルとリヤフロアの接合部を確認することができます。
ただ、メーカーや車種、形状によっては、アンダーカバーが取り付けられている場合などもあり、確認しにくいこともありますので、注意してください。
エンドパネルの接合部は外側の部分にも「シーラー」が塗られています。この「シーラー」の状態を確認することで、交換されているかなどの判断をおこないます。
上記写真は、エンドパネルが交換されているので、シーラーがパネルと同じ色になっています。「硬さ」も柔らかいので、指で押すと新車時との違いがわかります。
※ただ、外側のシーラーに関しては、エンドパネルが交換されていても、シーラーの色がボディーカラーやパネルと違うこともあります。注意して確認してください。
メーカーや車種によっては、エンドパネルとリヤフロアの接合部の溶接跡を確認できる場合もあります。
上記写真はエンドパネルが交換されている場合の接合部の溶接跡です。新車時からの状態であれば、丸いスポット溶接跡が確認できますが、交換され、溶接しなおしているので丸いスポット溶接がなくなっています。
このように、溶接跡を確認できる場合は、できるだけ確認し、修理跡などの判断材料を増やします。
パネル同士の隙間の確認
リヤ部のパネルの隙間確認は、
- リヤフェンダーとバックドア
- リヤバンパーとリヤフェンダー
- テールレンズとリヤフェンダー
などの隙間が左右均等になっているかの確認をしておきましょう。
国産車はとても精巧に作られており、基本的には、左右対称に作られています。ですから左右の隙間などを確認することで、「過去に修理をした形跡」の手がかりを見つけるができます。
左右のパネルの隙間に違いがあった場合
立て付け調整などによるズレなどの可能性もありますが、隙間が均等でない場合は、「もしかして…過去に損傷があって修理したのでは」と推測できますし、より慎重に見ることができます。
リヤ骨格部位の確認方法
外装パネルに交換跡や板金修理跡があった場合は、必ずその周辺の骨格部位の確認をしましょう!
リヤ部にある主な骨格部位は、4箇所あります。
- リヤフロア(トランクフロア)
- リヤサイドメンバー
- リヤインサイドパネル(リヤインナーパネル)
- リヤクロスメンバー
この骨格部位に損傷や修理跡があれば修復歴車に該当します。
リヤに荷室があるワゴンタイプやハッチバックの車両は、上記写真のように骨格部位が取付けられていることが多いです。セダンタイプの場合は、「リヤ部 骨格部位名称」の図のように骨格部位があります。
リヤ部での修復歴で重要なのが、リヤフロア(トランクフロア)です。リヤフロア(トランクフロア)はリヤ部の修復歴車の中で1番修復歴の痕跡がある箇所の為、リヤ修復歴の確認をする場合は、必ずリヤフロア(トランクフロア)の状態を確認してください。
リヤフロア(トランクフロア)の確認
リヤフロア(トランクフロア)は、リヤ部の修復歴の中でも最も多い箇所になります。バックドアやリヤフェンダーに「板金修理跡」や「パネル交換跡」があった場合は、必ずリヤフロア(トランクフロア)の状態を確認しましょう。
特にエンドパネルに損傷や修理跡などがあった場合は、リヤフロア(トランクフロア)も修理している可能性が高いので必ず確認してください。
確認方法は、エンドパネルの状態の確認をおこなうときに、一緒にリヤフロアの確認をおこなうやり方が、効率のいい方法です、見るポイントも似ているのでエンドパネルとセットで確認してください。
リヤフロアは、エンドパネルとの接合部でもある、先端部の方から確認します。
「板金修理跡」がある場合は、「先端部が凸凹になっている」、「平らな状態でない」などの状態になっており、新車時とは違いがあります。修理工程で塗装を塗って仕上げるので、「色が違っている」、「表面がザラザラしている」ことなどもありますので、見るだけでなく、手で触って確認することも有効的です。
中には、事故による損傷がそのまま残っていることや古い損傷がサビていることもあります。
リヤフロアは、車両の下回りから確認するのも有効的です。
下回りから確認することで、室内側からでは、気が付かなかった凹みや修理跡が見つかることもあります。できることなら、室内側と下回り側とセットで確認することで、より修復歴の発見の可能性が高まります。
下回りの確認もエンドパネルとの接合部である先端から確認する方が効率的です。
リヤフロアが「交換」されている場合は、パネル全体に塗装がされているので、「艶があり過ぎる」、「艶のない状態になっている」、「ザラザラした手触りがある」などの特徴があります。
それからリヤフロア接合部の状態も確認します。
上記写真の位置にリヤフロアとリヤサイドメンバー接合部があります。外側(車両の下回り)にあるリヤサイドメンバーとは、スポット溶接で取付けられています。そのスポット溶接の状態を確認することでリヤフロアの交換跡を確認することができます。
リヤフロア交換時のスポット溶接部には、「丸い跡」が残ってなく、溶接跡すら見にくくなっていることもありますので、そういった違和感に気が付くことも重要です。
リヤフロア修復歴の事例を動画で紹介!
ホンダ N/(スラッシュ)
ダイハツ ココア
ダイハツ キャスト
リヤサイドメンバーの確認
リヤサイドメンバーは、主に車両の下から覗き込むことで確認することができます。
リヤサイドメンバーの場合、エンドパネルよりも内側にある箇所が骨格部位となるので、その部位に損傷や修理跡があれば、修復歴になります。エンドパネルより後ろ(外側)にある部位は、骨格部位とみなさないので、損傷や修理跡があっても修復歴には該当しません。
修理の仕方は、「板金修理」や「半裁交換」をおこないます。
「板金修理」の場合は、「パテの跡」やパテを整えた時の「ペーパー跡」、仕上げの「塗装跡」などが修理の形跡として残りますので、それを確認することで判断します。
「半裁交換」の場合、サイドメンバーは、1本まるごと交換することはできないので、損傷があった箇所を切断し、新しいサイドメンバーを溶接で取付けます。切断箇所には「ペーパー跡」の痕跡が残ったり、仕上げた時の「塗装跡」の痕跡がありますので、それを確認します。
リヤサイドメンバーは他のリヤ部の骨格部位よりも損傷しにくい箇所ですので、修理跡がある場合、事故によるリヤ部の損傷が大きかったことが予想されます。リヤ部で損傷しやすい、リヤフロアやリヤインサイドパネルの状態を優先的に確認した後に、リヤサイドメンバーの確認をする手順の方が効率よく確認できることが多いです。
リヤインサイドパネル(リヤインナーパネル)の確認
リヤインサイドパネルは、リヤフェンダーや内張に覆われているため、リヤ部の骨格部位の中でも、位置や境界がわかりにくい箇所になります。
上記写真は、左リヤインサイドパネルの位置を解説しています。
リヤインサイドパネルのほとんどが、内張に覆われている為、確認しにくくなっていますので、事故などによる損傷が起きやすい先端部などをしっかり確認し、修復歴になるかを判断をします。
リヤインサイドパネル先端部は、エンドパネルとの接合部(境界線)を確認することで、どこからが骨格部位になるか把握することができます。メーカーや車種によって接合部(接続部)の位置は、違ってきますが、接合部の溶接されている箇所でリヤインサイドパネルとエンドパネルの位置を見分けます。
リヤインサイドパネル(リヤインナーパネル)とアウターパネルはスポット溶接部を境界に分けられます。
上記写真は、リヤ部のアウターパネルとインナーパネル(リヤインサイドパネル)の境界を示したものです。リヤ部のウェザーストリップを外した箇所には、インナーパネルとアウターパネルがスポット溶接により接合されていますので、その接合部を境界にし、内側にあるパネルが骨格部位であるリヤインナーパネル(リヤインサイドパネル)に該当します。
修復歴が有無を確認するときは、この境界線であるスポット溶接の接合部を見ます。リヤインナーパネルを交換するときは、このスポット溶接部を切り離し、新しいパネルを接合しますので、スポット溶接跡が新車時とは、違った状態になっていないかを確認します。
板金修理をするときも、このインナーとアウターの接合部を修正機で引っ張り、形を整えてから、修理をおこないますので、この接合部にクランプ跡がついていることもあります。このクランプ跡がある場合は、インナーパネルの板金修理をおこなったことが推測されます。
クランプ跡とは
- 事故等で大きな衝撃により、車体の寸法(全長、全幅、全高)に狂いが生じたり、車の骨格(フレーム)部位に損傷を受けたりした車に対して修復を行う、フレーム修正機を使った跡のこと
- フレーム修正機は、車体を「固定」「引出し作業」をおこなうために、車両先端部等をつまんで固定します。その時についた跡をクランプ跡と呼ばれます。
リヤタイヤハウス内を確認することで、側面のインナーパネルとアウターパネルの境界を確認することができます。
上記写真は、インナーパネルとアウターパネルの境界線の例です。境になるところには段差があったり、くぼんでいることがあるので、それを目安にします。その境界より内側にあるインナーパネル(インサイドパネル)が骨格部位となりますので、修理跡や交換跡があるか確認をします。
タイヤハウス内には、防錆コートが塗ってあり、接合部が確認しにくいので注意しましょう。防錆コートが新しく塗りなおされていたりする場合は、アウターパネルやインナーパネルの板金修理など、その周辺を修理したことが推測できますんで、防錆コート自体の状態の確認も重要です。
リヤインサイドパネル(リヤインナーパネル)が修復歴になるのは、主に後方側面の事故により損傷した場合が多いです。
リヤクロスメンバーの確認
リヤクロスメンバーは下回りから見ることで確認できます。
ただ、ほとんどの乗用車の場合、車の中心に近い位置にありますので、リヤ部が大きな損傷をする事故などがあっても、リヤクロスメンバーよりもリヤフロアやリヤサイドメンバーの方が先に損傷しますので、リヤフロアやリヤサイドメンバーの確認の方が優先されます。ですから、リヤクロスメンバーの確認は、修復歴の発見においては、あまり重要視されていません。
※トラックのような、フレームを骨格とした車両の場合は、リヤクロスメンバーの確認が必要になります。
まとめ
リヤ部の修復歴は、フロント部の次に多い箇所です。多くの場合は、追突事故により修復歴車となっています。
リヤ部の修復歴を見つける手順
- 外装パネルの「板金修理跡」や「パネル交換跡」があるかを確認。
- その周辺のパネルや部品の「交換跡」や「修理跡」も確認。
- パネルや部品の「板金修理跡」や「修理跡」、「交換跡」ある場合は、その周辺の骨格部位を確認。
まずはリヤ部の外装パネルに「板金修理跡」や「パネル交換跡」がないかをしっかり確認した後に、骨格部位の確認をします。
リヤ部の外装パネルの確認
リヤ部の外装パネルや部品の確認は、「バックドア(トランクフード)」と「リヤフェンダー」、「パネル同士の隙間の状態」、「エンドパネル」の確認が重要になってきます。
- バックドア(トランクフード)
- リヤフェンダー
- エンドパネル
- パネル同士の隙間の状態
骨格部位の確認
外板パネルに「交換跡」や「板金修理跡」がある場合は、その周辺の骨格部位を必ず確認しましょう。
リヤの骨格部位は主に4箇所あります。
- リヤフロア(トランクフロア)
- リヤサイドメンバー
- リヤインサイドパネル(リヤインナーパネル)
- リヤクロスメンバー
車の衝突した場合、衝撃は外側から内側へとつたわりますので、衝撃がつたわるのと同じように車の確認もおこないます。各部位、先端や外側から確認することで効率よく修復歴を見つけることができます。
リヤ部の修復歴で特に多い箇所は、トランクフロアです。トランクフロアの確認を優先的に行うことが重要です。
ほとんどの乗用車の場合、リヤクロスメンバーの確認は重要視されないので、他の骨格部位を優先的に確認しましょう
※損傷やその修理跡が「エンドパネルより後方」にあった場合や「下からの突き上げ」によるものは、修復歴に該当しません。
骨格部位の確認は、トランクフロアや下回りなどの暗い箇所をみることもあるので、ライトで照らしながら確認する方が骨格部位の状態が見やすくなります。それから、一方向だけでは、わかりにくい場合もあるので、あらゆる方向からみる必要があります。工夫をしながら確認しましょう。
関連記事▼その他の修復歴の確認方法についてはこちら▼
『プロが解説!車の査定ポイント。修復歴を見つけるコツは外装の確認から』
『プロが解説!車の査定ポイント。修復歴を見つけるコツ-フロント編-』
『プロが解説!車の査定ポイント。修復歴を見つけるコツ-サイド編-』
『プロが解説!車の査定ポイント。修復歴を見つけるコツ-ルーフ編-』
▼修復歴車についての記事はこちらを参考に▼
コメント